地域学習で町歩き!武蔵野市立第五中学校と大町市立仁科台中学校が地域間交流
「皆さんは男清水を『おとこしみず』と読みませんでしたか?これは、『おとこみず』と呼ばれています。」
大町市立仁科台中学校(以下、仁中-jinchu-)の生徒が、大町の町中の文化/歴史を学び、調べ、武蔵野市立第五中学校の生徒にレポートを読み上げながら説明しておりました。
東京都武蔵野市の中学生が大町に訪れ、このように地域学習を通じ、大町市の中学生と交流する【まちなかディスカバリー】は、今年で2年目の開催となりました。
こんにちは。AIR MAGAZINEライターのたつみです。
今回は、9月に武蔵野市立第五中学校(以下、五中-gochu-)の地域学習として行われた【まちなかディスカバリースクール】についてレポートします。
-まちなかディスカバリースクールって?
東京都武蔵野市ではセカンドスクールという農山漁村に長期宿泊を行う教育活動を実施しており、五中は昨日からここ北アルプス山麓地域を学習地域とし、4泊5日で白馬村のホテルと農家民宿で宿泊し、山岳の自然学習/農作業体験などを行いました。
その行程で、五中の旅行の企画手配をしている大北農協観光課が、大町の町歩きを提案。
もともと仁中の地域学習にも関わっていた地元の【NPO法人ぐるったネットワーク】が企画協力し、双方の学校の希望を調整しながら、学び合いの交流が実現しました。
仁中生徒が五中の生徒を案内して町を歩きながら、事前に学んだ大町の文化/歴史を紹介する「まちなかディスカバリー」。
町歩きの後は、仁中体育館でのポスターセッションと交流会に続きます。
-大町の文化的 歴史的な町並みを歩く
大町市街地は、古くは日本海と信濃を繋ぐ交易路の街道、通称「塩の道」が通り、関所と宿場の大きな町でした。
交通の要所となっていたことで、商家/酒蔵/土蔵などの歴史的な建築物が立ち並び、今も古き良きその面影をとどめます。
グループに分かれた生徒達は、町中の文化/歴史的な場所を巡り、仁中の生徒は総合学習の時間で調べてきた自分たちの暮らす町のことを、五中の生徒に伝えます。
◯街中ディスカバリースクール コース&ポイントマップ
・塩の道ちょうじや
・八日町ポケットパーク
・いーずら大町特産館
・松葉屋旅館
・男清水 女清水
・麻倉
・市野屋商店
・酒蔵のなまこ壁
・大町名店街
・下仲町ポケットパーク
男清水(北アルプス白沢水源)女清水(居谷里水源)は二つの異なる水源から引いている水で、これらは駅前本通りを挟んで東西に分かれて出ています。
飲み比べができる水場は今回のハイライト。
用意してきたコップを渡しながら、仁中生が五中生に説明をしておりました。
いーずら特産館では大町の様々な産品が扱われています。
他、市野屋商店の防火用のうだつのこと、松葉屋旅館が町のランドマークだったこと、麻倉がリノベーションされてギャラリーになったこと。
など、大町の町についてを調べたことを一生懸命五中生に説明をしておりました。
こういった、自ら調べたこと、関心を持ったことを誰かに伝えること。
これらの時間が、文化/歴史を学ぶ上でとても大切なことなんだと感じます。
生徒達は終始賑やかに、元気よく町の中を巡っておりました。
遠巻きから写真を撮り、様子を伺っていた私ですが、地域のことを「学ぶ」「知る」「伝える」ことは、中学生の彼らにとってこれからの糧になるんだろうなぁ。と感じた次第です。
私は7年前に北アルプス山麓地域に移住し、地域の文化/歴史に興味がありますが、地元の同年代はそういった情報には疎く、自分たちの地域のことをあまり多くは知りません。
それは地域における、学習や教育と関係するのかな?という、少々大きなことを考察することがあります。
過去からの文化が歴史として積み重なり、いまがある。
楽しくも賑やかに町を歩く彼らにとって、このような機会は、地域のことを学ぶ上でも、地域外の同世代との交流も。
とても有意義で価値のあるものであったのだと感じました。
以前AIRブログで取り上げさせていてただいた麻倉さんもコースに入っておりました。
誰でも作品を出展できる「アンデパンダン展」が開催されており、中学生は各々の視点で作品を鑑賞しておりました。
以前のブログ>>
AIR MAGAZINE Art&Crafts麻倉は「作ることで繋がる」ところ
街中ディスカバリースクールの始まりはツアーコンダクターの農協観光さんの発案によるものでした。
町歩きを通しての地域学習の企画を市内のNPO法人ぐるったネッットワークさんが協力し、もともと総合学習に力を入れていた仁中の活動を取り上げ、このような取り組みに落とし込まれたのだそうです。
【NPO法人ぐるったネッットワーク】
ぐるった=周辺/周り という意味で、地域の人や資源を繋ぎ、大町を発信する団体さんです。
地域での様々な活動の多くにぐるったさんは参画しており、地域情報を広く持たれております。
私自身も仕事や地域活動でご一緒する機会の多い団体さんです。
大町市のスキー場「鹿島槍スキー場」を起点に南は安曇野〜北は小谷村まで120キロの自転車の大会「北アルプス山麓グランフォンド」の開催や、地域情報を様々な切口で紹介する「ぐるっとマップ」の作成等、地域に関わる多くの事業を展開しております。
今回生徒たちをサポートしたのはぐるったの専門部会「北アルプスネイチャーガイド」のみなさん。自然体験やカンジキツアーなど、地域をフィールドとしたガイドやツアー企画の開催をしております。
今回のような町歩きを通し、外から来られた方に広く大町を知っていただこうと、街中ツアーの充実も検討されているようです。
大町には家の下に水路が通っていたり、通りを挟んで右と左で水源が違う水道が引かれていたり、黒部ダム建設時に栄えたり呑み屋街があったり。
と、見て回るには大変に面白い町です。
文化と歴史に触れながら大町を散策するのは、大人の方でも十分に楽しめると思います。
-未来を創る、これからの子供達
「ここ(大町)で育った子たちは、東京に憧れて地元を卑下しがちですが、大町が生き延びるためには、都会と対等な関係が築ける自立した町になることが必要。進学などで大町を離れる前に、故郷への誇りを持ってもらえれば。」
NPO法人ぐるったネッットワーク大町のゆっかさんこと鈴木氏はそう話します。
それぞれにそれぞれの良さがあり、双方が「知る」きっかけとなるよう、仁中と五中の生徒さんたちをつなぎ合わせました。
生徒たちは暮らす地域こそ違えど、同じように笑い合い、中学生らしくいたずらをしたりはしゃいだり。
この双方の関係性に、地域間の違いは感じられませんでした。
自分たちが生まれ、暮らす地域の未来。
引き継がれるものも朽ちていくものもある中で、子供達は町のことを知り、何を考えていくのだろう。
そんなことを考える時間でありました。
記事&写真
たつみかずき
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