<イベントレポート>原始感覚美術祭2016‖自然と作品が調和した美術祭

<イベントレポート>原始感覚美術祭2016‖自然と作品が調和した美術祭

息を呑む。

という言葉を、ここ長野県北アルプス山麓地域では使うことが私にはよくあって。
それは、例えば

雨上がりの雲の割れ目から光が差して雄大な山を照らす瞬間とか。
湖の向こうから真っ赤な太陽が昇って湖面を赤く染めた瞬間とか。
どこまでも広がる田んぼの絨毯を風が揺らした瞬間とか。

それはふとした瞬間に
当たり前のようにそこに存在していて。

そんな一瞬一瞬に、私は息を呑む。のです。

「嗚呼、素敵なところで暮らしているな。」
なんてことをその度に感じているのです。

今回私が取材で訪れた原始感覚美術祭でも、私は何度か息を呑む。ことがありました。
自然と作品が調和していて、目に映る空間そのものに圧倒されて。

「嗚呼、なんて綺麗なんだろう。」
大町の大自然の中で独り、つぶやくのでした。

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こんにちは。AIR MAGAZINEライターのたつみです。
今回のAIR MAGAZINEでは、毎夏、木崎湖畔を中心に大町市内で9月4日まで開催されていた【原始感覚美術祭】をレポートいたします。

原始感覚美術祭って?や、美術祭に関わる人、などについては先にまとめた記事
>>AIR MAGAZINE 原始感覚美術祭2016‖北アルプス山麓大町市木崎湖畔の美術祭開催のお知らせ
をご参照ください。

-原始感覚美術祭のフィールド

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「え、この先?ここ、降りるの?!」
確かに手にした案内マップには

※森を歩くので、山歩きに適した格好でお越しください。

と書いてある。
あるのだけど「ここ、降りるの?!」
と、私の心はざわめいておりました。

「滑ってコケたら、結構痛いぞ。。」
大町市の北西、エネルギー博物館とか、大町ダムの近くの【千年の森】の中で独り、つぶやいたのです。
普段山に入る時であれば何の躊躇もしないくらいの山道がそこには続いているのです。
が、私が今、訪れているは「美術祭」

まさかこんなにも「山の中」に作品が展示されている!
だなんて思いもしなかったのです。

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展示場所への入口はこういった感じでして。
千年の森は、ツリーハウスや木のブランコや、「自然体験」を思う存分楽しめる自然と調和した素敵な空間です。
「徒歩7分」と遠慮気味に書かれた看板から森の中を突き進み、早10分。
水の流れが聞こえる下り坂を見下ろし、私は普段履いているスニーカーと白いTシャツでここに来てしまったことを後悔していました。
(全ては案内マップの注意書きを気に留めていなかった私の責任です。笑)

坂道を木や、設置されているロープなどに頼りながら、カメラを守りながら下りきったところには。。

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こんなにも透き通る小川が流れておりました。
その川の中には。。

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彫刻で彫られた大きな岩がありました。
あまりにも突然にこの岩と出逢った私は「はぁ。。」と困惑と感嘆の息を漏らしたのでした。

原始感覚美術祭の展示場所となるフィールドは大きく分けて3つ
・木崎湖畔
・千年の森
・大町市市街地

このフィールドの森や山、田んぼなどの「自然の中」
商業施設やギャラリー、酒蔵などの「施設の中」
そして、個人宅や個人宅の蔵などの「人の家の中」
に、多種多様な作品が展示されています。

展示されている作品を見て、私が感じたのは「自然と作品の調和」でした。

◯自然の中の作品たち
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◯施設の中の作品たち
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◯人の家の中の作品たち
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この美術祭で特に私が、驚きと同時に好奇心をそそられたのは「人の家の中」の展示でした。
マップを見て、ところどころに設置された案内看板をたどって集落の中を作品を探して彷徨うのです。
その中で地域の人と偶発的に出逢い、お話をしたり、案内をしてもらったり。

で、見つけた場所が「え?!ここ?!!」という民家の敷地の中の蔵だったりして。
蔵の1階は普通の物置で、2階がまさかこんなことになっているなんて?!!
と、とてもワクワクしながら作品を見て回ることができました。

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とっても立派な古民家だったり

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森の中のログハウスだったり

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民家の敷地内を横切ったり

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こんな風に蔵のブレイカーをあげて、農作業道具がある1階から2階に上がって作品を見る!なんてそうそう体験できないですよね。笑

地域の中にこのように作品が点在していることにより、普段足を運ぶことのない地域や、景色や、人に出逢える。
マップや案内看板を頼りに地域を巡る。
こういった楽しみも、この美術祭の一つの醍醐味かもしれません。

◯案内看板について
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マップを頼りに近くまで行くと、このように赤い案内看板に矢印が描かれています。

◯休憩所について
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JR海ノ口駅のすぐ近くにある、展示場所ともなっている少し変わったコンビニエンスストアYショップニシさんが休憩にはうってつけです。
飲み物/食べ物が販売されていて、おやきや蕎麦が食べられる食堂も併設されています。

中にはテーブルがあって、私が訪れた時には作家さんがみんなでお弁当を食べておりました。
とってもローカルで且つハートフルな空間です。笑

◯最寄り駅について
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この美術祭は徒歩で回るには範囲が広すぎますが、西丸震哉記念館でアート自転車のレンタサイクル(800円/日)ができるので、木崎湖畔をゆっくりと見て回るには電車で来られるのもいいかもしれません。
北アルプスと並行し、湖のすぐ脇を走る電車に揺られ、無人駅を降り立てば旅気分を満喫できますよ。

木崎湖畔の最寄り駅
・稲尾駅西丸震哉記念館まで徒歩5分)
・海ノ口駅Yショップニシまで徒歩5分)

-北アルプス山麓大町市の魅力

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美術祭のフィールドとなっている大町市は北アルプス山麓地域で、北隣はスノーリゾート地で有名な白馬村から北アルプスが繋がっております。
大町市は、美術祭の中心となる木崎湖を含む仁科三湖を境に、北側は雪がたくさん降る地域、南側は雪の少ない地域です。

古くは日本海から塩などの物資を運んだ「塩の道」の関所/宿場町と、のちには黒部ダム建設の影響で栄えました。
その為、市街地地域は古き良き歴史的な雰囲気を感じることができます。

市街地から離れると平地が続き、田畑や林檎畑が広がります。
その向こうには高くそびえる山々。

大町市は歴史的な町並みと田舎と自然の景観が楽しめる地域です。

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大町を巡ると、こういった素敵な景色に出逢えます。
これも美術祭の楽しみの一つかもしれません。

-パスポート&マップの入手方法

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これが美術祭に参加する為のパスポート(チケット)兼マップです。
購入は以下の大町市内商業施設にて1000円で購入できます。

◯パスポート&マップ販売所
・西丸震哉記念館
・いーずら大町特産館
・art&craft 麻倉
・Yショップニシ
パスポート兼マップ価格:1,000円

こちらのパスポート兼マップを開けば作品の展示場所がマップに記されていました。
こちらのマップをご購入いただいたら、マップを片手に原始感覚美術祭をお楽しみいただけます!

-レポートのまとめ

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私には芸術に関する知識はほとんどありませんし、作品一つ一つの質についても語ることもできません。
作品の感想が「よく分からない。」という結論になるものも少なくありません。

それでも、私はこの美術祭で大町を巡り、自然の中で感じたことや、説明のできない感情と出逢いました。
それこそ「息を呑む。」瞬間もありました。

作品を探す冒険心をくすぐるワクワクも。
木漏れ日の森の中でのドキドキも。

楽しみ方はきっと、人それぞれ。
一人一人が感じる感想があって、それでいい。

そんなことを感じる美術祭でした。
原始感覚美術祭もこのAIR事業も、他大町で起こる様々な活動も含めて、「芸術」の観点から大町のことをもっと知っていきたいと思います。

記事&写真:
たつみかずき