原始感覚美術祭2016‖北アルプス山麓大町市木崎湖畔の美術祭開催のお知らせ
「地域の人たちからこの森借りてさ、去年の作品並べたり、今年の作品をいま創ってたりしてるんだ。どうなるかわからないけど、楽しみなんだよね。」
大町市の酒蔵の蔵人でもある、原始感覚美術祭実行委員長の池田武司氏が展示場所となる木崎湖畔の森を訪れたとき、そのような話をしてくれました。
大町市はそこら中に、森や山や川や湖の自然があって、自然の中に人が生きている!そのように感じる場所がたくさんあります。
この、うっそうと木々が立ち並ぶ森は、未開の地の雰囲気を醸し出しておりました。
美術祭が始まり、ここにたくさんの作品が並び、そしてたくさんの人々がこの森の奥に足を進めていくのか!
そんなことを想像すると、池田氏が言う「楽しみ」という真っ直ぐで純粋な想いに、私も深く共感をおぼえます。
「これ、木の枝とか蔦とか、そこら辺のもの集めて作ったらしいんだ。集めるだけですごい大変なんだよな。」
そう言って見せていただいたのは、今年の8月から開催される原始感覚美術祭2016に向けて制作されている作品でした。
作家さん曰く、私が取材に伺った7月20日には5割が完成しているというその作品。
これもまた、自然の中に溶け込んでいて、と、言うよりも。
それ自体が自然を織り成す一つのパーツのようであるなぁ。そんなことを私は感じたのでした。
こんにちは。AIR MAGAZINEライターのたつみです。
今回私が紹介するのは、8月から大町市木崎湖畔を中心に開催されます【原始感覚美術祭2016】についてです。
今年で7回目を迎え大町市内外/海外作家総勢70名(展示以外のイベントなども含む)が参加する美術祭(芸術祭)で、いまや大町の夏の風物詩!と言っても過言ではないものとなっております。
そんな美術祭を多くの方に知っていただきたいと思い、今回は企画する方々の想いや、これまでのことに焦点をあててご紹介させていただきます!
-原始感覚美術祭?
大町市街地より北に車で15分程に位置する木崎湖畔を中心に開催される美術祭。
2010年に開催された【湖畔の原始感覚美術展】に始まり、翌年2011年から【原始感覚美術祭】と銘打ち毎年夏に開催されています。
7回目の開催となる今美術祭は、50を超える作品と、イベント参加を含む総勢70名のアーティスが参加します。
冒頭で紹介した森の中や、湖を眺める自然の中、市街地のアートスペース/飲食店、高瀬渓谷近辺の千年の森などが展示及びイベントの開催場所となります。
-原始感覚美術祭に関わる人
原始感覚美術祭は2010年に第1回目となる【湖畔の原始感覚美術展】より始まりました。
発起人はディレクターを務める杉原信幸氏と杉原氏のお父様でした。
杉原氏のお父様は木崎湖畔で西丸震哉記念館の運営をされており、記念館とその後ろに建つ滞在制作用の宿舎が拠点となり初回の美術展が行われました。
「<美術祭>という名称を付けたのは2回目からで、第1回開催時は<祭>というには規模が小さなもだったんだよね。だから1回目は美術展と名付けたんだ。<原始感覚>という言葉は、記念館の西丸氏が生前おっしゃっていた言葉で、その言葉に引き寄せられる作家と共に美術祭を開催することになったんだよね。」
ディレクターの杉原氏はそのように語ります。
美術とは縁遠い私ですが、美術そのものが各々の視点や解釈や価値観から成るものであると私は理解しております。
この美術祭のキーワードとなっている<原始感覚>の言葉の意味を記事を通しみなさんに説明することはできませんが、感覚的に「きっとこういうことなんだよね!」と、見て感じて解釈できるような作家さん/作品が集まっている場所が、この原始感覚美術祭なのだということを感じます。
現地制作をされている作家さん10組は滞在制作(アーティストインレジデンス)をしており、宿舎の外では暗くなるまで制作が行われておりました。
制作場のすぐ横には、このように滞在作家さんの洗濯物が気持ちよさそうに風に揺れておりました。
作家さんたちは各々、制作から帰ってきた順で食事の用意をしたり、シャワーを浴びたり。
そして、食事が出来上がる頃には全員が食卓に集まります。
制作と生活が一緒になり、そして美術祭開催までを家族のように仲間のように、そしてひとりひとりの作家として、滞在制作は行われています。
「この美術祭には、一人ぼっちの人が集まっているんだよね。」
原始感覚美術祭に集まる作家さんのことを、杉原氏はこのように話しておりました。
「美術は、経済とは別のところにあって、人が集まるかけがえのないものなんだよね。面白い人ひとりひとりが集まる。面白い作品ができて、積み重ねられて、醸成されて。大町はいま、麻倉や冬季芸術大学など、美術を通じてとてもいい場所ができてきている。」
そう杉原氏は続けます。
美術祭をとおし、4名の滞在作家が地元の方と結婚し、4名のお子さんが生まれたそうです。
美術/芸術/アートは、各々ひとりひとりの作家さんにとって「集まる場所」となっているようです。
「人は農業革命産業革命を経て爆発的に増加しこれを前提とした制度は未曾有の少子高齢化社会でいずれ破綻する。人は旧態依然とした方法で解決を試みようとするが問題を先送りにしているだけのようにしか見えない。 政治経済などの現実的な営みを直視したうえで、子供たちへどのような社会を引渡すことができるのか。私たちは何のために生きているのか。古代から受け継がれた伝統文化の中に存在するやり方や美意識を簡単に捨ててしまってよいのか。 “原始感覚”という言葉にその私の問いに対する可能性を感じました。」
実行委員長の池田氏もそうやってこの美術祭に惹きつけられたひとり。
3年目から精力的に企画運営に携わることになり、いまでは実行委員長として杉原氏を支えている池田氏。
二人は私から見ると対照的なキャラクターで、杉原氏は寡黙で、考え黙々と創り上げる職人気質な芸術家。
池田氏は社交的で人々を引っ張る兄貴的な存在。
とてもバランスが取れたコンビで、お互いがお互いを尊重し合う関係性なんだと感じます。
そんな二人が中心となり、原始感覚美術祭は今年で7回目を迎えることとなったのです。
「2年目になって実行委員会を立ち上げて、<美術展>から<美術祭>へと<祭>の文字を付けたんだ。2回目の開催後は体調を崩して続けられないと思ったんだけど、周りの人が続けたい!って言ってくれて、協力してくれる人が少しずつ増えてきて、継続することになったんだよね。」
杉原氏はそのようにこれまでのことを振り返ります。
池田氏やご家族、出展/滞在作家さん、地域の人など、たくさんの<ひとりひとり>が集まり、原始感覚美術祭の開催は続いているのだと感じました。
私は美術や芸術はどうしても高尚なものだと感じてしまいますが、それらが人を繋ぐコミュニケーションや表現の一つであるのだと、取材をとおして感じることができました。
今年は地元作家さんや、滞在制作がきっかけで大町に移り住み家庭を築いた作家さんなどの「地元の目線」と、初めて大町で制作を行う作家さんなどの「新鮮な目線」が交わる美術展となるそうです。
作家さんひとりひとりの視点で見られる大町。
彼らはどのような視点で、どんなことを表現するだろう。
うっそうとしたありふれた森の中で、どんなわくわくした祭がおこるのだろう。
美術祭でどれだけの人が見て、感じて、考えて。
そして交わっていくのだろう。
真っ直ぐに純粋で、単純な言葉なんだけど。
私はこの原始感覚美術祭が「楽しみ」でならないのです。
作家さんの作品を楽しみにくるもよし。
大町の自然にふれるもよし。
キャンプや湖で遊ぶもよし。
作家さんの目線と、あなた自身の目線がどのように交わるのか。
そんなことを、私の目線でじっくりと見させていただきたいと思います。
この夏は、どうぞ北アルプス山麓の湖畔へと。
足をお運びくださいね。
-原始感覚美術祭2016概要
名称:
信濃の国 原始感覚美術祭2016〜地は語る、水のかたりべ〜
開催期間:
2016年8月6日(土)〜9月4日(日)
開催地:
長野県大町市、木崎湖畔、大町市街地、千年の森ほか
主催:
原始感覚美術祭実行委員会
共催:
西丸震哉記念館/大町市教育員会
実行委員長:池田武司
アートディレクター:杉原信幸
コーディネータ― :森妙子、平野ももこ
問い合わせ:
原始感覚美術祭実行委員会事務局
〒398-0001 長野県大町市平10901 西丸震哉記念館内
Tel&Fax 0261-22-1436
E-mail nishimarukan@bj.wakwak.com
パスポート:
信濃の国 原始感覚美術祭パスポート1000円 中学生以下無料
詳しくは原始感覚美術祭HPをご参照ください
記事&写真:
たつみかずき
You must be logged in to post a comment.