塩の道 ちょうじや
「塩の道 ちょうじや」は、現在は「塩の道」と呼ばれている日本海岸沿いの糸魚川から松本まで塩を運んでいた千国街道の歴史と、その荷継宿として栄えた信濃大町の人々の暮らしを紹介しています。JR信濃大町駅から商店街を下って七分、立派な店構えが目を引く郷土博物館で、着付けや地酒の飲み比べなど、魅力的な地域体験も提供しています。近年はカフェの営業も始めた「塩の道 ちょうじや」代表の黒川さんに、現在の取り組みについて伺いました。
―立派な建物ですね。どういった経緯でここは地域の博物館になったんでしょう?
この建物は築127年になります。近年になって、持ち主さんが引っ越しを決めた昭和55年に建物を取り壊す話があったんですが、その時に町の方たちが「こんないい建物を壊すだなんてもったいない」という声があがり、博物館として利用を始めたんです。
―「ちょうじや」の展示内容を教えていただけますか?
ちょうじやの母屋の方は、糸魚川から松本城下まで、塩をはじめとした海産物と、麻などの陸産物の交易路であった千国街道「塩の道」に関する資料や古民具等などを紹介しています。実は私はこの仕事をするまでは歴史は苦手だったので、逆にそういった方たちにも興味をもってもらえるように心がけています。
また、土蔵の方に併設している流鏑馬会館では、若一王子神社の例大祭で行われる「子供流鏑馬」を紹介しています。子供が馬に乗って、町中にある標的を弓でうちながら神社へむかう神事です。私の息子も数年前に夏祭りで子供流鏑馬のぼぼさま(馬の乗り手)をやったのですが、本当に大変な行事で、子供も大人も祭りの最後には疲れてきてぐったりしてるんですね。だけど、祭りの最後に神社から馬をひいて帰る途中、町の人達がみんな家からわざわざ出てきてくれて拍手をして「大変だったね」「お疲れ様」とねぎらってくれたんです。本当に感激したし感動しました。そんな実体験を込めた説明を来館者の方にお話しすると、伝わり方も違いますよね。
―「ちょうじや」ではカフェも併設していますね。地域の博物館にカフェというのは珍しい気がするのですが。
足を運んでいただいた方々に、建物を見るだけではなく、その中でゆっくりしていって頂けたらと思って始めたんです。カフェをするなら、やっぱり地域のものを食べてもらいたい、おやきを出したいと思った時に、よく家でもおやきを作っていた母からレシピをもらい、その作り方で作ることにしました。だから、まさに地元の味です。
―塩の道小祭りセットも美味しそうですね。
大町の伝統食である「えご」等を使った、郷土料理の軽食セットです。「えご」は乾燥させた海藻の一種で、日本海側から運ばれてきた食材なんです。色々試してみようという事で、「えごでGOGO!」という名前でえご料理レシピのコンテストも行いました。思いがけずたくさんの応募を全国からいただき、58作品もの応募がありました。これは本当に私たちも嬉しくて。セットの中でご提供しているのは、このグランプリをとった「えごのみそ漬け」なんですよ。みなさん是非ご賞味ください。
館内のカフェ
メニュー (黒川さんおすすめ)
おやき(一ケ) 150円
塩の道小祭りセット 750円
甘酒ラテ(温/冷) 450円
―体験型のワークショップなども開催しているんですね。
はい、予約をいただいて、着物の着付けや、お抹茶点て、日本酒飲み比べなどの体験を行っています。外国人の方だけではなく、国内からの観光客の方も体験していただいています。
お座敷を使って映画の上映会をした事もあります。本格的な音響機器も使って、お客さんも沢山いらっしゃいました。時々コンサートも行っていますし、「ちょうじや文化講座」という地域史の勉強会も毎月行っています。地域の方に先生になってもらって、古文書を広げて読んでみたり、地域のスキー場の歴史を学んでみたり。私たちもすごくおもしろいし、すごく勉強になっているんです。それが次のイベントの種になったりもしますから、価値ある古い建物をそのままお見せするという事と、新しい使い方をするということ、その両方を大事にしていきたいです。
―その他に「ちょうじや」で開催されているイベントを教えていただけますか?
個人的にやりがいを感じているのは、地元の小学生の授業です。「いまの道具」と「むかしの道具」を比べてみるというテーマで子供たちが来るので、昔の人達の創意工夫のすごさを伝えたいと思ってやっています。囲炉裏をみせて、子どもたちに「これはいまの道具だとどんなものだと思う?」と問いかけると、「ストーブ」とか、「コンロ」って声がかえってくる。囲炉裏はそれだけじゃなくて、雪で濡れたみのや草鞋を乾かす乾燥機でもあるんです。
昔の人は自分たちで創意工夫をしながら、身の回りのものを作っていたわけで、本当にすごいと思います。そういう感動や実感が子供たちにも来館者の方達にも、伝わるといいなぁと。言葉やイメージだけじゃなくて、生きた体験として歴史を伝えていくことができるというのがこの施設の強みですね。
―地域と共にある博物館なんですね。
地域の方々に支えられているんです。近所の方が「庭の手入れするかい?」と中庭の木々の刈り込みに来てくれたり、夏には縁日のイベントを手伝ってくれたり、子供たちに竹でおもちゃを作ることを教えてくれたりしています。そういう有形、無形の文化を伝えていくことがこの施設の役目だと思っています。
ワークショップやイベントなど
ゆかた体験 3000円~
お抹茶点て 1000円~
日本酒飲み比べ 1300円~
―本当に素敵なお話を聞けました。最後に読者の方へメッセージをお願いします。
大町は山もあり、湖もあり、レジャーも、もちろんスキーもできる素晴らしい土地だと思います。そして興味深い文化もたくさんあります。ぜひ「塩の道ちょうじや」にも皆さん足をお運びください。お待ちしています。
「塩の道 ちょうじや」
website http://www.alps.or.jp/choujiya/
入館料 大人500円 小中学生250円 未就学児無料
※団体料金(20名以上) 大人450円 小中学生200円
開館時間 5月〜10月 9時〜17時(入館は16時30分まで)
11月〜4月 9時〜16時30分(入館は16時まで)
休館日 5月〜10月 毎月第3・4水曜日
11月〜4月 毎週水曜日、年末年始(12月29日〜1月3日)
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