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おおまち×芸術祭 ♯1

いよいよ9月13日から開催される
北アルプス国際芸術祭2024。
参加アーティストは
11の国と地域から36組となります。
今回は作品の展示場所に結びつきのある方に
大町のことや芸術祭について
インタビューさせていただきました。

縁で生まれた古本屋

ー先日、開業1周年を迎えられましたが、移住されてから現在までを振り返ってみていかがですか?

もともと東京の新刊書店で働いていた経験があって、東京を離れたあとは美術館で働きながら瀬戸内で島暮らしをしました。契約期間が終わったあとに、また本に関わる仕事をしたいなという気持ちがありました。でも東京に暮らしていると行きたい美術館やお店が沢山あって、誘惑が多くてすこし疲れちゃったんですよね。そこでたまたま上田市の古本の会社が中途採用をしていて、その会社に転職するタイミングで長野へ移り住むことになりました。4年ほど勤めてから会社員を辞めて、今のお店の屋号でイベント出店や知人のお店に間借りをしながら古本を売る活動を始めました。その後、大町でのイベント出店をきっかけにお店の3階にある三俣山荘図書室さんのオーナー夫妻と知り合い、1階を貸していただけることになりました。もともと「いつか山の麓で本屋をやれたらいいな」という気持ちで今の屋号を決めたので、大町でお店を開けるなんて願ったり叶ったり、「まずはやってみよう!」という気持ちで店舗を構えることを決めました。

とはいえ具体的に開店に向けて計画をしていた訳ではなかったので、資金面などの準備はあまりしていませんでした。内装はできるだけお金をかけずに、設計士さんや工務店を入れず、友人知人たちの助けを借りてDIYで整えました。
今後も本を売ることで自分の生活が最低限成り立つようにしていかなきゃと思いますけど(笑)、街の人に立ち寄ってもらえる場所をつくることや商店街にひとつ明かりを灯しておくことの意味や意義を考えながら続けていくことが大事なのかなと思います。

本屋には、息抜きのような感覚でちょっと寄ってもらえる気軽さがあると思っています。旅行先でふらっと入ったら、たまたま欲しかった本や気になる本が見つかるかもしれないし、同じ本屋に通っていてもそのときの気分や興味で手に取りたくなる本が変わったり、どんな人にもいろいろな可能性を秘めていると思います。私のお店の場合は山と自然にまつわる本が多いので、山の麓の玄関口である大町で営む本屋として、町の空気感や自然の豊かさ、歴史ある登山文化が伝われば嬉しいですね。大町には地域に馴染んで営んでいるお店の人たちが多いので、私もそれを心がけたいなと思いますし、地元の方にも観光客の方にも立ち寄ってもらえるようなお店作りを目指しています。

店頭にあるこだわりのディスプレイ
店主の小野村さん

移住者の視点からみた大町の魅力とは

ープライベート時の休日の過ごし方を教えていただけますか?

休日は趣味の山登りに行ったり、山岳博物館に行くことが多いです。山歩きに行ってもなぜか野生動物と遭遇 することが少ないので、博物館の付属園にいる雷鳥やカモシカを眺めて癒されています。あわせて車でも徒歩でも登れる鷹狩山に行くのもおすすめです。町と北アルプスを臨む景色は何度見てもため息が出ます。湖も好 きなので、お花見や紅葉の季節に仁科三湖をドライブするのもとてもいいですよ。歩きだと中綱湖の周りをお散 歩するのがおすすめです。何も持たずに手ぶらでのんびり歩くのが好きです。

ー趣味が山登りとのことですが、大町でおすすめの登山コースや山はありますか?

さくっと誰でも登ることができる里山なら鷹狩山で、北アルプスのような標高の高い山にも行き慣れている方におすすめなのは蓮華岳です。

ーこれまで山登りをされてきて、記憶に残っていることや景色はありますか?

どこだろう〜、悩んでしまいます・・・(笑)でも、コマクサが咲いてる時期の蓮華岳は感動しますね。山頂のすこし手前ぐらいから登山道のまわりにふわ〜っと群れるように咲き始めて、それがほんと天国みたいな感じなんで す。連休などのハイシーズン以外は、貸切状態でその景色を独り占めできることもありますよ!

ー大町ならではの景色や好きなところはありますか?

やっぱり北アルプスとの近さでしょうか。「こんなに壮大な山々が目の前にあるなんて!」っていうのが1番かな。先日しばらくぶりに地元に帰省した時にその差をとても感じました。地元は関東平野の真ん中にあるひらけた土地なので、山のない景色になんだか落ち着かなくてそわそわしてしまいました(笑)まだ大町にはたった1年しか住んでいませんが、北アルプスの壮大な山々が目の前にあることがいつのまにか日常になっていたんだなぁ、と感じました。毎日見ているからかもしれませんが、大町から眺める北アルプスが1番好きですね。大きな三角の蓮華岳があって、爺ヶ岳があって、猫の耳のような鹿島槍があって、というように山登りに馴染みがない人にも説明しやすいのが大町から見える山々の特徴ですよね。

ー今後の大町に期待することはありますか?

大町の美しく豊かな自然はいつまでも変わらないでいてほしいので、自分自身も自然を守るためにできるだけ気を遣って生活したいと思っています。あとは大町に暮らしてよかった、暮らしたいと思ってくれる方がこれからも増えていくといいなと思います。私のように県外から移住してくる人も、Uターンで大町へ帰ってくる人も、大町に住んでいない人でも、みんなで町を盛り上げて、「大町を好き!」と言ってくれる人が増えたら嬉しいですね。 それこそ芸術祭も今まで大町を知らなかった人に訪れてもらうきっかけになるということでも大きな意味があると思います。誰かに大町を好きになってもらうために、私にもなにかできることがあるかもしれないし、日々頭の隅っこで考えていきたいと思います。

蓮華岳のコマクサ
山岳博物館の冬毛の雷鳥(メス)

北アルプス国際芸術祭への想い

ー今回、“書麓 アルプ”さんが作品の展示場所に決まったとのことですが、お客さんとして実際に北アルプス国際芸術祭は来られたことはありますか?

1回目は数作品ですが観にきました。当時は上田で働いていましたが、その時一緒に働いていた友人と日帰り旅行がてら遊びにきました。ちょっとうろ覚えですが(笑)八坂の作品とダムエリアも行ったかな。あとは木崎湖の作品や名店街の浅井裕介さんの作品も観ましたね。

ー北アルプス国際芸術祭の印象や楽しみ方があれば教えていただきたいです。

大町の芸術祭は、ランドスケープに溶け込んだ作品が多いのかなと思います。もちろん建物の中で展示する作品も沢山あると思いますが、屋外作品の印象が強く残っています。天気や時間によって見え方も変化するし、 作品を包み込む景色や空気ごと五感で感じて楽しんでもらえたらいいなぁと思います。有名な方だけでなく若手のアーティストさんの作品もたくさん展示されるので、国内外を問わず今を生きる方たちの作品を長野県で見られることが珍しいし貴重な機会だと思うので楽しみです。また大町の民話や歴史をテーマに作品の制作をされているアーティストさんもいらっしゃいますよね。作品のことはもちろん、その作品ができるまでの背景や大町の文化もあわせて知ってもらえるよい機会だと思います。

ーこうすれば楽しい芸術祭になるのではと思うことがあれば是非教えていただきたいです。

ガイドブックやマップを活用しながら、地元住民のおすすめ情報も聞くことができたら面白いなぁと思います。ガイドブックには作家さん本人の作品の解説や展示や制作の過程が詳しく書かれているので、逆に地元の方の生の声というか「あそこの作品が面白かったよ!」みたいな率直な感想やおすすめを知ることができたら、どの作品を観に行こうか迷っているときに参考になるかもしれません。私自身は会期中お店を開いているので、芸術祭の作品をどれくらい観に行けるかわかりませんが、気に入った作品があればお店を訪れてくれた方におすすめしていきたいと思います。

ー最後に、今回ご自身のお店が作品の展示場所として決まった時のエピソードや心境を教えていただきたいです。

グアテマラのアーティストさんが大町を描いた作品を展示していただきます。北アルプスの山並みがダイナミックに、大町に住む雷鳥やカモシカ、猿などが生き生きと描かれているのが、お店のテーマでもある「山と自然」に ぴったりなので展示場所として選んでいただけて嬉しいです。今までも鉛筆画や写真展を開催してきましたが、とってもカラフルで大きな絵がお店の白い壁に飾られたらどんなふうになるんだろうというわくわく感でいっぱいです。大町と南米の空気がどんな風に混ざり合うのか今から想像しています。芸術祭のほかの作品も今から楽しみにしています!

大きなザックを背負った登山者やベビーカーにも配慮された広々とした空間
小野村さんおすすめの本「博物誌随想」著:串田孫一


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