夕方5時、山への道を進むなか陽が落ちていく。日本にきて今日でちょうど10日。薄暗い林のなかで聞きなれない音が響き、わくわくするような怖いような気持になる。ちょうど幽霊の話かなにかを聞く時のような。
先週は七倉ダムに行き、その静寂さと人工湖の見せる緑色に言葉を失った。日本で「コダマ」とか「ヤマビコ」と呼ばれる音のことを思い、この場所で語られる言葉を映し出す植物たちのことを思った。
科学で「サウンディング」とは湖や海底で音波を使って行われる水深測量のことだ。
サウンディングで得られたデータを使い海底の地図を作る。メリアム=ウェブスター辞書によると、「サウンディング」は他にも「探査」「テスト」「世論調査」などの意味があるらしい。まるでコウモリが超音波を出してその反響を聞くことで周囲の環境を知るかのように。
山から戻ったあと、青いポストイットの付箋に思いついたことを書いて私の新しい作業机に貼ってみる。机からは洗濯機が見える。音やら水やらのことを書いている間に、スタジオには石鹸の匂いが満ちていく。