松田 壯統
松田 壯統 Masanori Matsuda 1982 兵庫
阪神大震災で家を失った事を原点に、個人的身体経験、身振り、見立てなどによって、みえなくなっ
ているモノに会うことができる瞬間を作り出す活動をしている。彼が札幌で制作した作品「モエレ山から見えた家」は、モエレ山と札幌の街と落ち葉という3 つの素材を象徴的に捉えて詩的に繋ぎ合わせる事で、見えなくなった過去の一瞬と現在が交差する一瞬を想起させる。
AIR2015滞在期間: 2016年2月10日(月)~2016年3月23日(月)
あさひAIR滞在作家成果発表展「山・雪・生活」
会期:2016年3月14日(月)~3月23日(水)
「雪の裏側」
展示場所:いっし・あーとすぺーす
インタビューリンク
作家レビュー
ふと、松田壯統は「自分を味わう」という事をしているのではないかと感じたりする。こういう人がいっぱいいたら、世の中はもっと自由で面白いだろうという、無根拠な自信がある。彼は今回の作品「雪の裏側」で、自然と人をつなぐ「息」に注目した。真夜中のコンビニで、「息が、暗闇と雪に包まれている」という話をした時、自分がの息だけが聞こえる状態に新鮮な驚きを感じた。そして、息をしている事自体を自覚できる瞬間を導き出すように、彼は映像インスタレーションを構成していった。
10個の小さなスピーカーから息の音が流れ、五角形に仕切られたスクリーンにはそれぞれ映像が映し出され、中心に置かれた机を囲む4つのディスプレイ映像は呼吸に合わせて明滅している。机の上にモミの木をさした大きなガラス瓶の内側で結露した水滴に照明が当てられている。スクリーンの一つに、森の中で若一王子神社の権禰宜とオペラ歌手が出会う映像が投影されていた。ゆっくりと弧を描いて歩くオペラ歌手が通り過ぎてから、一礼した後に声をだす権禰宜。水の神様が通り過ぎていく様な不思議な感覚を想起させる印象的なシーンだ。息と共に吐き出された声が、自然の大きな循環と混ざり合って、僕の身体を拡張する。音や映像やオブジェによって、息を自覚するプロセスを追体験するような映像インスタレーションだった。
あさひAIRコーディネーター佐藤壮生
作家HP http://masanorimatsuda.net