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味噌

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田んぼから作る信州味噌

横川商店
山口倫子さん

はじめ私はこのお店のお客さんだったんです。京都から来たんですよ。本当に面白いお店で、夕食時お客様とお酒の試飲台でご一緒することもあります。お風呂帰りによってくれて試飲台で一杯やっていく人もいます。県外から休みの度にきてくれるお客さん達も沢山いるんですが、冬はクーラーボックスにお味噌やしぼったまんまの生のお酒、あと店の前の雪を一緒にいれて持って行くのが楽しみだっていうんです。だから私も冬は店の前のきれいな雪はかかずに残しておくんです。

もちろんお味噌の味も本物ですよ。今はまさに手前味噌ですけど。私も当時ここの麹をいただいたら本当に美味しくってびっくりして。でも同時に「これより美味しいもの絶対さがしてやる!」とも思ったんですよね。でもやっぱり無いですね。実家のまわりで探せば色は良いものあるんです。真っ白で。でも、ここの麹ほど甘くならない。何故かって、地元のたんぼでお米から作ってました。他に無いですよ。そして築200年以上経つ蔵の中には、発酵に適した菌が沢山住んでいるんです。蔵付きの菌ってやつですね。

味噌作りは職人技の連続の連続です。うちは北の小谷村出身の杜氏さんに来てもらっています。
まずは麹造りでね。ひと一人すっぽり入ってしまうぐらい大きな甑(こしき)で蒸しあげたお米を山にしたところに、麹菌を種付けしてやるんですけど、時間と温度の勝負。ガッとかきまぜてやるんです。熱過ぎるまま麹菌がつくと死んじゃうのでうまく冷ましながら。
これを一昼夜寝かせた後、麹蓋に振り分ける作業もあるんです。私も最近やっと120枚を誤差1枚で振り分けられるようになってきました。徐々に感覚が出来てくるんですよね。
他の蔵でほとんどやっていないような作業も沢山あります。種つきしたお米を、麹菌になじませるように揉み込む「床揉み」。そのあと水を吸わせてやる「水くれ」。あとは温度を均一にするためにもう一度麹を広げる「手入れ」。杜氏さんによるとこの3つの作業が入ると全然味に違いが出てくるそうです。均一に温度かけるために蒸し上げて麹蓋にいれた蒸し米を4時間ごとに積み替える作業なんかは本当に大変な作業で。そうやって2日間手をかけながら菌糸の生育を待ちます。これが原料の麹になります。

麹の次は豆ですね。西山産の大豆を使っています。長野県有数の産地です。土が黒土でね、豆作りにあうんです。炊き上げたお豆を味噌にする前に味見も兼ねて、五目豆にして食べたりするんですが、もう普通に売ってるものと全っ然味が違いますよ。本当においしい。
それでこの釜で蒸し上がった豆をすぐ潰して丸めて、味噌玉に。これも手作業で切り分けるんですが大きさが5ミリ違うと配分狂っちゃう。ここまでの作業が1クールだとすると、3クールぐらいやってやっと高さ2メートル50センチぐらいの樽がいっぱいになります。これをお塩とさっきの麹と攪拌して樽に入れていきます。

塩も本当に大事。
10年ほど前に大病をしたんです。そのときに漢方医療の師匠に出会いまして塩の大切さについて教わりました。師匠の言うには最近よく減塩っていいますけど、本当に良い塩をとってないことが問題なんだそうです。塩田廃止で自然のお塩は食卓から無くなり、工場でつくられたナトリウム塩が大半。昔はうちでも自然の塩を使用していたはずですが、今はコスト面で全てをそうするのは無理です。でも五年前から自然の塩で味噌作りをはじめまして、今は試行錯誤の最中です。

塩って体の悪いものを体の外に出してくれるわけじゃないですか。最初は私も塩なんて、と思ってたんですけど、ちょうど塩麹ブームの時に自然塩とナトリウム塩で別々に塩麹つくって野菜を漬けてみたんです。そしたら自然塩はしっかりと浸透して、お水が沢山出る。味も全然違うんですよ。野菜の味と麹、塩の味がばらばらにならない。人間の体に入った時だって全然違うと思います。おかげ様で私も風邪は十数年ひいてません。ちゃんとしたお塩で体の中の水を抜いてやることが冷えをとることに繋がるそうです。

お味噌は熟成が進むと味が全く変わってくるんです。3年、5年となっていくと深みが出てくるので、調味料としてお料理に合わせて頂くのがオススメですね。田楽もいいです。かわったところでは、蕗味噌をピザにのっけたり、カルボナーラと合わせたり。発酵食品同士だから合うんですよ。

味噌汁は二年味噌
そして二年味噌はぜひ味噌汁にして貰いたいです。シンプルに豆腐とネギでね。香りが最高だから。この気温で温度かけないで、低温熟成。日本酒の雪中埋蔵といっしょです。12月から3月まで厳しい寒さの中熟成がゆっくりになる。それが香りをうみます。長く細い、きれいな澄んだ香り。これが大町の風土そのものの熟成香だと思います。

~2014信濃大町 食とアートの廻廊より~