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【北川ディレクター日記】6/18更新

Photo:Kouichi Imai

先週の土曜日、岡山から名古屋経由で信濃大町に入りました。松本で乗り継ぎに1時間ほどあったので松本駅の駅前を歩いたら、「アートフロント」というギャラリーがあったので嬉しくなって、隣にあった昔ながらの味のある(お茶も何種類もあって良い淹れ方だった)「炉苑」という喫茶店に入って信濃毎日新聞をひらいたら、伊藤キムさんの小学校でのワークショップで子どもたちが大喜びだったとの記事があった。帰りに画廊の名をよく見たら「アートフレンド」とあって、納得。

さて、久しぶりの雨、雲天だったのに20時半にはカラリと夜空が晴れて、西に微かに残光がある。かつて朝ドラの「おひさま」の舞台にもなった中山高原での青島左門の『花咲く星に』は、可憐な花の星たちの奥に、まさに宙天の星の底が見えるという世にも稀な世界が幻出していたのでした。可憐な花のシェードに埋め込まれているLEDの光は、かすかに揺れるので、見る側からはふと消え、ふと光って、ますます蛍のように幽かで、しかも近くに寄れば花にもいろいろあってそれだけで興奮してしまいます。それが粗密をもって視界全体にあるので、私たちは樹木に囲まれた高原に一人でいるような感じ。地上の小さな花々が宇宙の星に続いているというのは不思議な気持ちになるのです。友達と行っても、その30分は一瞬のこと。まさにおとぎ話のなかにいるようです。配置、密度、花々、光、信濃の高原を熟知していなくてはこうもいきません。作家の力量に感服。ここで言わずもがなの注意。ぜひ静かに黙って過ごしてください。空間を全身で感ずるのに、人の声は困る。見るのも音楽会と同じなんですね。

このあと森林劇場で伊藤キムのダンス。これがまたすごかった。ラジオに入ってくる偶然の電波を活かして、身体部分部位が脱力したり、電気が入って動くような動作は驚いてしまいます。観客は魅入ってしまいます。

さて、源流エリアには「国営アルプスあづみの公園大町・松川地区」があり、森野晋次さんのアートプロジェクト気流部のプロペラ作品があります。入り口から奥に入った「大草原の家」という場所から見ると無数のプロペラが、エンジンをふかすたびに回転数を増すプロペラのように順序だって回りだす様は見ものです。こどもたちが色づけしたものは一本の木から張られたテグスにつけられ、これも可愛らしく美しい。この公園は猿もいるし、カモシカが出るくらい広いのですが、さすが国立公園、プログラムも解説もよくできているので、他所からの人はぜひお寄りください。

次に、ダムエリアの作品についてです。

北アルプスの豊かな雪解け水の恵みを受けるなかで、どう災害をうけとめ、どう利水するか、水とともに生きてきた大町市の課題だったと思えます。1963年竣工の黒四ダムはアジア最大のダムで、大町はその工事の拠点となったわけだし、県境が道でつながっていない富山県とは黒部ダム・立山黒部アルペンルートが開通し、大町はその長野県側の入り口になりました。大町温泉郷はそのなかで隆盛を誇っていました。また岩石と土砂を積み上げ高さ125mの七倉ダムはロックフィルダムの凄さ、美しさを伝えてくれます。(ここでは7月15日におおたか静流と藤本隆行のコンサートが開催)次に高瀬ダム、大町ダムと下りて行くのですが、大町ダムをイタリアのパトリック・トゥットフオコの龍神の目が睨んでいます。龍の眼は地元の子どもの目がモデルになっています。時間があったらぜひダム見学をして下さい。

この上り口には大町エネルギー博物館があり、この外壁にはこの土地の13種類の土を使った淺井裕介の生命の木が展開する「土の泉」があり、爽やかな気持ちの良さです。次には日帰り温泉施設の「心笑館」(ルビ:ココエカン)の1階にある岡村桂三郎の『龍の棲家』、ここでは密度ある空間に圧倒されます。岡村は木を焼き、その割れ目、襞に日本画の顔料を埋め込み描く力ある作家ですが、今回は龍をテーマに見事にサイトスペシフィックな作品をつくりました。そしてこの2階には、栗田宏一による日本海側の土の標本が2部屋使った海岸線に置かれていて、このふたつの作品の重、明の対比が気持ちの良いものになっています。このコースは爽やかなハイキングコースでもありました。

 

 

 

 

次回の私がガイドするミステリーツアーは7月1日です。ぜひご参加ください。

 

北川フラム