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【北川ディレクター日記】6/8更新

<No.2>

この11日、ツアーガイドをします。是非いらしてください。

前回<源流エリア>の説明をしましたが、マーリア・ヴィルッカラにしろ、大岩オスカールも、遠藤利克も、平田五郎も、そこにある中心の素材は水だったり、御影石だったりするのですが、共通するのは「気配」なのではないか、と思います。アーティストのかなりの人は気配を大切にしているようなのです。これは、〈水〉、〈木〉、〈土〉に続く〈空〉のことかもしれません。オープニングツアーを2日間にわたって行いましたが、かなりの評判で、その共通項は「気配」だったとも言えるでしょう。それは、「五感で感ずる」「浸透しあう」「空間に包み込まれる」といったものです。

ですから、第1回のミステリーツアーは「気配」を中心にお話します。ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット、杉原信幸、岡村桂三郎など楽しみがいっぱいです。

乞うご期待。

 

<No.1>

北アルプス国際芸術祭オープンの前日と当日、2日間ツアーで作品巡り。ホッとしました。爽やかに、面白かった。

総合ディレクターと言っても、当日まで全作品は完成していないので、旅行者の眼で辿らないと全体が環境と一緒になって身体を包んでこないのです。感想を少々述べながらのブログを毎週書くことにします。

信濃大町に最初に入ったのは5年前。溢れるばかりの水が身体全体にかかってくる。街を歩いていても足元に水流の心地よい音。用水に波打つ奔流。湧き水が美しい仁科三湖。北アルプスから水を利水する黒四を始めとするダム群。川の流れに展開するなだらかな扇状地、そこからの盆地につくられた市街地。それら全体を見はるかす美しい里山の東山地区。

これらを巡りやすいようにまとめ、大町を知れるようにしたのが、「源流エリア」、「仁科三湖エリア」、「ダムエリア」、「市街地エリア」、「東山エリア」の5つのエリアです。

山腹を巡りながら街を見下ろし、ここにやってきた私たちの祖先が山の神々、山に生きる動物たち、自然たる世界が混ざり合い、折り合いをつけてきた日本列島山間部の原初の姿を感じ、そこで採れるものを食べて生活してきた人たちの世界。それはいわば「食とアートの廻廊」。それを体感しようとすることが芸術祭の意図したものでした。

準備をしていくなかで感じたものは、水とそれゆえの高く伸びる東西からの植生が混在するフォッサマグナの地に育つ木。豊かな水が岩を砕いた末にできた土。そこから眺め上げ、異なる世界を想像せざるをえない高い空。それらを「水・木・土・空」と呼びたいと思ったのです。それは日本列島に今を生きる私の、信濃大町について思うことですから、当事者でもありながら、外来者が「観光」を考えるところに普遍性があり、かつ地域の人々の抵抗もある、そこに現代にいて、そこをひらく可能性があると思いやってきました。水と木と(金属という道具もあるのですが)と空気と言い換えても良いですね。

さて、第1回は「源流エリア」です。

大平由香理さんの作品、泉小太郎伝説にある水の化身である犀龍の体内巡りを(紙と日本画顔料の格闘のような)経て、隣の森林劇場に入ります。

あたり全体、森の雰囲気のなか、滴り落ちる水の音と、小道具の光の反射、水槽の魚がいる舞台に立ち、指揮台に乗れば・・・(これは行ってからのお楽しみ)。演者と客席(見る者と演ずる者)が入れ代わる逆転という芝居のダイナミズムも伝わってきました。気持ちが良いのです。マーリア・ヴィルッカラの作品は常に新しい、五感に触れるもので楽しみなのです。

温泉郷の入口のかつて売店だった建物には、新津保建秀と池上高志の「不可視な都市:ロング・グッドバイ」と大岩オスカールの「夢の部屋」があります。オスカールのピンホールカメラの室内は新展開で、さすがだなぁと思われる美しさでした。新津保さんと池上さん作品の方は、塩の圧倒的な力と粗い「映像」の面白さがったのですが、意図はアーティストに聞いてみないと分からない。

大町温泉郷のホテルの食事は工夫を凝らしてありますが、未だ食べていないので、これからの期待。くろよんロイヤルホテルには大阪のYottaのコケシが据えられていました。館内にある布施知子さんの客室、ジミー・リャオさんの図書館、挟土秀平さんの土壁の和室は見事だと思いました。

そこから川俣正の工事中の焼却場を囲む雑木林のなかにある「源汲・林間テラス」に行きました。ちょうど私たちが行ったとき、そのデッキを使ってコンサートをやっていました。これは気持ちの良い、レベルの高いもので終わるまで居たかったのですが、ここで川俣さんは、会期後も続く林間学校を考えています。つまり焼却場を含めて、自然・あるいは私たち人間を考える場をつくろうとしているのですね。

次に、宮の森自然園の鬱蒼とした森に入りました。地元の人たちが滑り止めのゴムを貼ってくれた遊歩道を歩くと、至る所の木の上から水が滝のように落ちてくる。その気配を遠藤利克は圧倒的な水の存在を、彼らしいやり方で感じさせてくれました。

ここから少し歩いていくと、かつて蛍の舞う川とため池があったところに、平田五郎が2014年につくった版築の湧き水濾過装置に足して、少し上流に10トンもある御影材の蓮の花の湧き水器と、またその上流に水の湧き出る場をつくっています。この地に生き、この地を愛し、蛍の郷を作っていた高橋利雄さんに敬意を表した、丹精こめた美しいプロジェクトです。アーティスト・アーティストとも言うべき作業を見るのは嬉しいことでした。

そこから車で移動して仏崎観音寺の参道にかかる太鼓橋に行きます。ここを流れる水の景色は半端ではない。いつ行っても驚かされます。オーストラリアのジェームズ・タップスコットは、その冥界との境界にアーチを架けました。夕暮れ、半円に組み込まれた光に輝く間欠水は、まさに私たちを幻の世界に連れて行ってくれているかのようでした。

「源流エリア」には、国営アルプスあづみの公園にある、アートプロジェクト気流部の作品があるのですが、これは次回に記します。

6月7日 北川フラム

 

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