マリーナ・ガスパリーニ
マリーナ・ガスパリーニ Marina Gasparini 1960 イタリア
イタリアのガビッチェ・マーレに生まれ、ラヴェンナ美術アカデミーを卒業。画家として作家活動を開始し、90年代よりテキスタイルを用いた新しい表現方法を確立。2000年よりNET ARTのオンラインプロジェクトに参加。日常の発見をテーマに、テキスタイルを用いて住空間と言語によるインスタレーションを制作。個展やグループ展に多数参加し、近年はミラノ・トリエンナーレやポーランドのテキスタイル中央博物館で開催されている国際タペストリートリエンナーレに出展。ヴェネツィアの美術アカデミーでの教職を経て、現在はボローニャで教鞭をとる。
滞在期間 AIR2016 2016年9月15日~11月23日
あさひAIR2016滞在制作展「稲穂の実る音」
「狐と宝 / The fox and the jewels」
展示場所:大町リノプロ1F
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レビュー
[マリーナ・ガスパリーニの魅力は自由さである]
彼女は、テキスト(言葉)とテキスタイル(織物)という言葉の類似性に着目する、言葉遊びが大好きなアーティストだ。普通、言語は世界認識をどのように「分類」するかによって体系化される。それを彼女はなにかが「分かる」一歩手前で方向転換し、勘違いも許容して次のきっかけをひらめきながら、創作行為を続けている。 正直、連想ゲームのような彼女の発想に、僕は度々話している内容を見失った。しかし、その制作プロセスは独特に面白い。彼女はAIR2016共通テーマの一つである「稲作」から、イタリア語のRISO(お米)- が、同時に「笑う」という意味を持つ事に着目する。
そして、日本の笑うお面である「おかめ」に興味を持ち、お面の匿名性をきっかけに、立体的な自画像を縫い込むという行為へとむかっていく。そして、彼女の本質的な魅力は、手仕事にある。固定概念にとらわれない自由な発想が、糸を縫い、編み、硬化させる手仕事に没頭することで、無意識的に整理されたのだと思う。
地域住民の自画像が縫い込まれたお面をつけて行ったパフォーマンス「Riso Rosa Blessing」では、彼女が滞在中に感じた様々なキーワードを貫くように、かまど神社の境内を異空間に変えた。その2つの側面:テキストとテキスタイルを行き来する彼女のスタイルに
よって、糸で描かれた囲炉裏が空中に浮かぶ展示空間は、自由な発想と手仕事の暖かさに溢れていたのだ。
あさひAIRコーディネーター 佐藤壮生