信濃大町あさひAIR

| エリー・キョンラン・ホ

エリー・キョンラン・ホ

エリー・キョンラン・ホ Ellie Kyungran Heo 韓国 1976

主題として選んだ記録映像をコラージュのようにつなぎ合わせる手法で、実験的な映像作品を制作するアーティスト兼映像作家。作家とテーマの間で生まれ、刻々と変化する交流、衝突、揺れ動く感性の経過を記録する。制作過程において、そのテーマと観客、そして作家自身の倫理的な関係性が問われる「場」を生み出そうと試みる。高校美術教諭の経験を経たのち、ロンドン芸術大学卒業、ロイヤルカレッジオブアートを修了。

 

滞在期間 AIR2016 2016年9月15日~11月23日

あさひAIR2016滞在制作展「稲穂の実る音」

「ご飯、食べましたか? / Did you eat rice?」

展示場所:いっし・あーとすぺーす

 

インタビューLINK

 

レビュー

[エリー・キョンラン・ホは新しい映像体験を追求している]
僕は作品「ご飯、食べましたか?」を観て、普段見ている映像の退屈さを改めて実感した。映像は20世紀に発明された最強の「記録媒体」である。テレビが普及し、あらゆる情報が映像化して大量に蓄積されることで、人類の世界認識は劇的に変化した。今世紀のめまぐるしい技術革新で情報化は加速し、僕らはとうとう映像を能動的に「みている」のか、受動的に「みせられている」のか、よくわからなくなってしまった。カット割りは考える間もないほど高速化し、サブリミナル効果のような速度で移り変わる映像が巷にあふれている。そんな時代に、彼女は自分の作品をフィクションとドキュメンタリーを併せ持つ「主観的なドキュメンタリー」だと説明する。それは、多くの情報が映像化される時代に生まれた
僕らが、能動的に映像を「みる」方法を模索している。 誤解を恐れずにいうと、これから僕らが向き合わなければいけない映像の課題は「対象への想像力」ではないだろうか。彼女は今回、百姓と子供たちによる稲の収穫を55分の映像作品にまとめて発表した。百姓のお米に対する愛情に感動した彼女は、登場人物と自らの関係を意図的に映しこむ事で、僕らの想像を超えた言葉を引き出していく。鑑賞者に説明するためではなく、能動的に鑑賞すること、観た人がそれぞれ自由に感じるための工夫があふれていた。だからこそ、作品「ごはん、食べましたか?」を通して僕は映像の退屈さを実感し、彼女が実現した映像体験に新しい可能性を感じたのだ。
あさひAIRコーディネーター 佐藤壮生

作家HP http://elliekyungran.com/